中学校で美術の非常勤講師をしています
無意識の時間を積み重ねていく「線の模様」という授業で、生徒とぶつかりました
その生徒(Tくん)は、美しい作品を、既に1枚提出しています
2枚目の作品を描いているのですが、構成しようとばかり思っているので、
意識ばかりが優先され、全然、美しい線を生み出せずにいました
「絵の主役が画用紙の中心に来ないようにする」
というルールを2枚目の作品で守れなかったので、
Tくんは、そのことだけが頭にあり、・・3枚目も4枚目も、
1枚目の作品に比べたら、全然美しくはならなかったのです・・・
正直なわたしは、そのことを、Tくんにそのまま伝えると
Tくんの顔色がみるみる変わり・・
「なんでなんですか!
俺は1枚目の時と全くおんなじ気持ちでこの作品を描いたのに・・・
あなたは、なんで認めてくれないんですか!!」
声を荒らげて真剣に訴えてきたのです・・・
わたしはこう伝えました
「1枚目のときのTくんは、あんなに美しい時間を作り出していた・・・
とても美しい時間を積み重ねていた
そして、残念なことに、Tくんの無意識の美しい状態って
わたしにしか分からないんです」
席に戻ったTくんは、しばらく、怒りが収まらない様子でしたが
5分もすると、だんだん落ち着いてきました
Tくんの表情がだんだんと、もとの柔らかい状態に戻り
また美しい線を引き始める様子を
わたしは黙って眺めていました
授業が終わり、美術室から退室するときには
お互いに、相手に対して感謝の挨拶を交わすこともできました
本気でぶつかったことで、その生徒はわたしの思いを理解してくれたのだと思います