線をゆっくり引く

中学校で美術の非常勤講師をしています。

細軸のペンだけで描く

「線の模様」

という、とても楽しみな授業があるのですが、

この授業で絶対守らなければならない決まりがあります

それは

ゆっくりと線を引くことです

速く引いた線は

最後が「シュッ」っと

細くなったり、かすれたりしますよね。

そういう線は絶対に引いてはいけないルールを設けます。

どれぐらいのゆっくりかというと、

蟻が歩くくらいの速さです。

理想は、ゆっくり過ぎて

画用紙にペンのインクが滲むくらい・・

を目標にしています。

「えーーーーー!」

「そんなにゆっくり線を引いたことないよーーー!」

という声が聞こえてきそうですが、

中学生は天才なので、

ほぼ99%の生徒がゆっくりな線を引くことができます。

精神状態が安定しないと

人間はゆっくり線を引くことができません

大人はまず無理です・・。

最初はどうしても速くしか線を引けなかった生徒が

ゆっくりな線を引けるようになった時、

忘我の状態になり、

になっていきます。

その時の生徒の顔の美しいこと・・・・。

そして、この授業には

もう一つの特徴があります。

それは、

どうしても眠くなった時には、

寝ていいことにしています。

今の中学生は、とても疲れています。

どうしても眠くなったときに間違って引いてしまう、あの、

美しくない線を

絶対に引いてほしくないからです・・・。

ですから、生徒が睡魔に襲われ、

白目をむきはじめたら、

わたしが生徒に近づき、そーーーーっと、生徒の手から、ペンを抜き、

「寝ていいですよ・・・」とささやき、

寝てもらうのです。

中には、よっぽど、寝不足なのか、

いびきをかきながら眠る生徒もいて、

クラス全員が、いびきが気になり、笑いをこらえながら、

全然授業に集中できないときもありますが、

それはそれで、

いい思い出になります。

線の模様の授業を満喫した生徒は

別人のようになって、

中学2年生の夏休みを迎えるのです・・・。

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